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「情報の科学と技術」Vol.62(2012),No.10に掲載された論文がオープンアクセスになりました。抄録とキーワードを掲載いたします。

抄録:
組織アーカイブズとしてのビジネス(企業)アーカイブズは「多様な価値を持つ経営資産」である。現在国内外では、組織内アーカイブズの価値を高め、それを通じた親組織の経営の質の向上に寄与するアーカイブズの活用が進められつつある。一方、記録管理(レコードマネジメント)とアーカイブズを結び付けるレコードキーピングの未確立、組織内アーカイブズへのアクセスに関する相反する考え方の存在、アーカイブズ理念とそれに連動する評価選別に関する考え方の未整理、アーカイブズ担当者(アーキビスト)が業務に精通し付加価値を生み出すための教育研修のあり方、海外現地法人のアーカイブズ管理の困難さ、といった課題が存在している。

キーワード:
ビジネスアーカイブズ、企業アーカイブズ、付加価値、アクセス、レコードキーピング、レコードマネジメント、記録管理、アーキビスト、評価選別、社史

全文は下記からご覧下さい。
 

質問者:キッコーマン株式会社国際食文化研究センター 舩田一恵
回答者:紙本・写真修復家 白岩洋子

質問:
 写真が水に浸かり変色してしまった場合の処置について。
工場の設備写真がポケットアルバムに収納されていますが、アルバムの半分くらいが水に浸かり、乾いて黒黴が生えてしまいました。カラー写真の色が変わってしまったものを修復することは出来るでしょうか?とりあえず、刷毛で黴と塵を払い、アルバムの未使用のポケットに入れております。

回答:
 水損写真の原因としては、洪水、津波、消化の際の水濡れなどがあげられますが、特に写真において致命的なダメージのひとつは水損後のカビの繁殖による被害です。写真に使用されているゼラチンは親水性があるため、水分を吸収した状態が続くと膨潤、溶解します。また、そこにカビや菌類が発生しやすくなり、そのまま放置すると画像の破壊やインクや染料にじみが起き、元に戻すことが出来なくなります。

 ご質問にある写真の修復可能な処置に関しては、
1)カビが進行、再発生する可能性もあるため、まず、全ての写真を複写します。
2)カラー写真の色が変わってしまっていたり、色が溶けてしまっている部分はゼラチン色素層が溶解してしまったため、残念ながら修復できません。
3)まだ汚れが残っている部分に関しては、色が溶解してしまっている部分を避け、水と綿棒で部分的に拭き取って下さい。
4)ポケットアルバムは未使用のポケットに入れるのではなく、新しいものを使用して下さい。

 今回のようにアルバムが水に濡れてしまった場合は、ポケットの中に水分が溜まってしまい、そのままではすぐには乾きません。出来るだけ早くアルバムから写真を取り出し、乾燥させることが重要です。もし浸かっていた水が汚水であれば、一度きれいな水で写真を洗ってから乾かします。なお、一般的によく見られるプリントの印画紙は主に二種類あります。1970年代より前のカラー写真、白黒写真はバライタ紙という印画紙が使用されており、一度水につけてから乾かすと、カーリングしてしまいます。その場合は少し表面を乾燥させた後、シリコンシートや不織布を写真の表面にのせ、吸取紙やフェルトのような水分を吸収するものに挟んで乾かします。画面がデリケートなので注意が必要です。現在も使用されている1970年代以降のカラープリントはRC紙というポリエチレン層があるもので、そのまま乾燥させてもカーリングが起こりません。

 以上の処置は被害が比較的小さく、作業が出来る時間とマンパワーがある場合ですが、そうでない場合はまずそのまま乾燥させるか、余裕があれば水で洗浄してからとりあえず乾燥させます。カビを防ぐために相対湿度65%を超えない場所で保管します。また設備があれば専門家の立会いのもと、濡れたまま写真を冷凍し、後から作業を行うという方法もあります。

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研修部会では資料の活用や保存などに関する管理の問題で、ご質問やご意見をお待ちしています。(掲載する場合の匿名は可とします)
また、ビジネスアーキビスト研修講座に関するご意見あるいは社史に関するセミナー、博物館に関するセミナーについても、ご意見、ご要望をお待ちしています。

kenshu@baa.gr.jpが専用メールアドレスです。 

質問者:キッコーマン株式会社国際食文化研究センター 舩田一恵
回答者:公益財団法人日本写真家協会専務理事 松本徳彦

質問:
 写真は何枚も焼付けされ、多くの人の手に渡されます。著作権は50年で切れますが所有権は紙焼きを持っている人は誰でも持つものなのでしょうか?具体的には、弊社所有の昭和初期の写真ですが、同じものを野田(キッコーマンの所在地)の市民が市役所のアルバムに貸し出し、写真提供者として名前が出されています。この場合、この写真を使おうとすれば、この提供者の許諾を得れば使えることになりますが、弊社はこの問題では静観していなければいけないのでしょうか?昭和初期の紙焼き写真の所有権の考え方は難しいように思います。著作権と所有権の関係など、ポイントはどんなところにあるのでしょうか?

回答:
 お尋ねの自社所有の写真は昭和初期のものであれば、権利の保護期間は切れている可能性が高いと思われます。何らかの理由で同じ写真を他人が所有し、その入手方法が正当であれば、その他人には所有権があります。著作権のないものが所有権のある他人に対して使うなと法律上は言えません。
 ただ、保護期間が満了した著作物は広く国民に開放するという考え方もありますので、他人が使うことを認めた上で、提供者と言うコトバについては話し合いで決めるのがよいと思います。
 因みに、著作権と所有権の法律上の違いは以下のとおりです。
著作権の著作物は情報という無体物であり、所有権が対象としているのは物であり、有体物です。したがって原則として、著作権と所有権は無関係に並存します。

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シンポジウム「デジタルはビジネスアーカイブズの未来を拓くか」のアンケートでいただいたコメントを掲載します。
特別講演、基調講演、シンポジウム、それぞれ42人の方の回答(計126件)から、18件を抜粋させていただきました。基準は辛口のご意見、提案ないしご希望、ポジティブな感想などで、バランスを考慮しました。(広報部会)

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  特別講演 渋沢雅英氏

○ 正にArchivesそのものの意味を、伝記を紹介していただく中で感じとることができ、素晴らしい内容でした。
○ かって作成に関わった『渋沢栄一伝記資料』についてのご講演を雅英理事長から伺うことができましたことは、望外の喜びです。あのDBで、晩餐会、御餐会を調べると、メニューや演奏曲がわかって面白いだろうなと、下世話な使い方を想像しますが、実は、経済は統計資料として大変貴重であることを思い出しておりました。理事長のご健勝と益々のご活躍をお祈り申し上げます。
○ 言葉での説明が多かったため、聞き取れないところが一部あった。事前に渋沢栄一伝記について詳しい説明、資料配布等があると良かったように思います。
○ 貴重な歴史のエピソードを聞くことが出来ました。デジタル検索のシステムや効能についての説明が欲しかった。
○ 渋沢栄一の伝記資料をまとめ上げるまでのプロセスを紹介頂いたが、これすらも伝記の中で、「側面史」として、雑記や著者の日記などから判るものだと思うと、渋沢氏の苦労と伝記の重要性を感じた。
○ 評価は後世の人に任せて、今は残せるものは何でも残す、の考え方は感動しました。

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  基調講演 吉見俊哉氏

○ 非常に興味深い内容でした。上層部への働きかけに役立つ内容で、勉強になりました。
○ すばらしいに尽きる。社会全体の視点から体系的にアーカイブの問題や役割をお話いただき、目からうろこが落ちる想いで聞いておりました。
○ 吉見先生の未来を見すえた重要な分析と提言に感心いたしました。特に文化のフローから創造的リサイクルは、日本の新たな産業になりえるものと思いました。
○ 先生もおっしゃる、まずは人材(アーキビスト)、そして法的整備(権利処理)を、国はバックアップして欲しい。
○ 吉見先生は素晴らしい。非常に面白く、ためになりました。われわれは本当に大変な時代にいるようですね。マクルーハンの言うことは正しかったのですね。
○ デジタル化した資料については、お話のとおり構造化されるべきであり、それは図書館における管理に近いと感じます。一方でビジネスアーカイブズにおいて現物は情報の入った”器”以上に、それ自体が資料的に価値を持っており、それは美術館・博物館における資料の考え方に近いのではないか、と思います。その紐付けというか、システム化をどのようにしたら良いのか、情報がありましたらお聞かせいただければ幸いです。

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  シンポジウム

○ デジタルの危うさをもう少し追求できると良かった。実際、気づいておられない方や企業も多いのではないか。
○ 「アーカイブズは、壁をこえる力を持つ」という吉見先生のまとめのお言葉、同感です。だからこそ公開も必要だし、何をアーカイブして、何を公開するのか、というところにその主体の”アイデンティティ”が現れるように思います。その、公開されたアーカイブによって、主体となる組織は”非自己との切り結び”を果たすのではないでしょうか、などと思いました。
○ 吉見先生の課題ポイント整理の見事さに感服いたしました。但し、記録管理、アーカイブズ理論が企業アーカイブズの現場に十分浸透していない状況も窺われ、BAAの取り組むべき課題になるかと考えます(BA講座以外の場で)。
○ 有意義な話の数々、勉強になりました。地味な展開になりそうなテーマを質疑応答で活気ある興味深い瞬間に変化させた吉見先生の見事な司会に感服。
○ スピーカーの人選が素晴らしかったです。アーカイブズの目的とグローバル化の二つに絞ってくださったのがちょうどよかった。法人文書の集約については、不足であり、かみあっていなかった。
○ 企業のアーカイブズについて、正史以外の裏面の歴史が必要だと言う意見は、大変参考になりました。広報は企業が苦しい時に、真先に予算が削られる部門だと思うので役に立つように発信していくというのは、とても素晴らしいことだと思いました。

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質問者:アサヒグループホールディングス株式会社 荒井光弘
回答者:日本図書館協会資料保存委員会委員 児玉優子

質問:
AV資料(音声テープ、映像テープ)の保管に関しての質問です。弊社では現在AV資料の電子化(パソコンの外付けハードディスクへの保管)を行っていますが、オリジナルのAV資料(テープ類)については場所の関係で廃棄しようかとも考えております。紙資料ではオリジナルが重要、とのことですが、AV資料ではどのように考えたらいいのでしょうか?

回答:
視聴覚資料のうち、映画フィルムは適切な保存環境で100年以上の保存の実績があり、たとえデジタルで制作され、デジタルで上映された作品でも、「保存はフィルムで」が共通認識となっています。しかし、録音テープやビデオテープは、フィルムほど長い寿命は期待できません。フォーマット変換後もオリジナルは廃棄しない[注]のが原則ですが、VHSのように画質の悪いテープの場合でも保存すべきかどうかは、2009年のAMIA (Association of Moving Image Archivists)会議のセッション“Can You Play Your Old Videotapes?”でも議論が分かれるようでした。
一方、フォーマット変換で作成されたデジタルファイルも、長期保存についての信頼性は高くありません。
オリジナルを残すことには、以下のような意義があるでしょう。

(1)記録作成のコンテクストを示すものとして
そのドキュメントは元々どんな媒体にどんな形で記録されていたのか、オリジナルには記録作成のコンテクストが内包されています。レーベルや容器にメモされている情報が重要なことは言うまでもありませんが、例えば撮影時期が不明でも、テープの型番やデザインから推測できるかもしれません。メモの筆跡も、撮影者を推測するヒントになるかもしれません。録音テープ・ビデオテープに記録されているコンテンツ(音声と画像)だけをデジタル変換してオリジナルを廃棄してしまったら、これらの手がかりも失われます。

(2)再デジタル化のマスターとして
後日、よりよい音質・画質で再度デジタル変換できる可能性が出てきたときのマスターとして活用できる可能性があります。仮に現在最高の音質・画質でデジタル化しても、5年後、10年後にはもっと高音質・高画質が標準的になるかもしれません。しかし、デジタル化と同時にオリジナルを廃棄すると、手元に残ったデジタルファイルを元に、それ以上の音質・画質に再変換することは不可能です。
 フランスに、国立視聴覚研究所(INA)というテレビ・ラジオ番組のアーカイブ機関があります。膨大なコレクションをいち早く全てデジタル化したことで知られ、『世界最大デジタル映像アーカイブ INA』という図書でも紹介されました。果たしてデジタル化が完了して、オリジナルのテープはどうなったのだろうと疑問に思っていましたが、2008年11月にINAのジャン=リュック・ヴェルネ氏がシンポジウムのために来日された際にうかがうと、デジタル化した後も、将来よりよい変換方法が考案されるかもしれないので、オリジナルのテープは全て保存している、との回答でした。

(3)バックアップとして 
デジタルファイルは一定のエラー率を超えると突然再生不能になることがありますが、アナログの録音テープ、ビデオテープの場合は音質・画質の劣化は徐々に進行します。また、物理的に破損してもデータ喪失は部分的で済む場合もあります。デジタルファイルとは異なる特性を持つことから、バックアップとしての価値もあると思います。

 以上、3つの観点から考えてみました。紙資料でオリジナルの保存が重要なのと同様に、視聴覚資料もオリジナルの保存に意義があります。しかし、実社会で保存を正当化して実行することは、必ずしも簡単ではありません。視聴覚メディアの脆弱性、再生技術に依存する点などを考えると、保存の正当化へのハードルは紙資料以上に高いと思われます。資料の重要性、希少性、保存スペース、劣化の度合い、再生機器の利用可能性、維持管理費などを検討して、保存と廃棄それぞれのメリット・デメリットを見極め、総合的に判断せざるを得ないでしょう。
 なお、本稿は日本図書館協会資料保存委員会の見解を述べたものではなく、筆者個人の意見を述べたものです。
注:Association of Moving Image Archivistsの“Videotape Preservation Fact Sheets” p. [12] (http://www.amianet.org/resources/guides/fact_sheets.pdf) や、Association for Recorded Sound Collectionsの技術委員会による“Preservation of Archival Sound Recordings. Version 1” p. 2 (http://www.arsc-audio.org/pdf/ARSCTC_preservation.pdf) などで言及されています。


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 研修部会では資料の活用や保存などに関わる管理の問題で、ご質問やご意見をお待ちしております(掲載する場合の匿名は可とします)。
 また、ビジネスアーキビスト研修講座に関するご意見、あるいは社史に関するセミナー、博物館に関するセミナーについても、ご意見、ご要望をお待ちしています。

kenshu@baa.gr.jp が専門メールアドレスです。

 

第17回ビジネスアーキビスト研修講座では受講者にアンケートをお願いしご回答をいただきました。
集計の結果をご報告いたします。

全8日間(全12講座)の延べ受講者数           200名
1人1日1件とした全回答数                   93件
上記回答率                            47%

講座ごとの総回答数                     135件
上記の回答数に対する回答項目ごとの割合
   
講師  とても良い     良い       普通       あまり良くない
    79件(59%)   34(25%)  14(10%)    2(1%)

講義  わかりやすい             普通       わかりにくい
   102件(76%)    −       19(14%)    0           

内容  充実している             普通       不充分
    91件(67%)    −       28(21%)    2(1%)

この他に自由にコメントをいただきました。
この中から今後の講座へのご要望など、建設的なご意見を抜粋して掲載いたします。

*講師の間で内容を共有すると、重複なく統一性がとれた講座になるのではないかと思います。
*アーカイブズ規定の事例、認定、記憶・インタビュー・証言などについてのアーカイブズの考え方。
*社史や企業資料館についての定例の講座開催。
*もっと深めたいと思ったときに参考になる文献(書籍・論文)やネット情報について。
*企業の資料室担当者によるアーカイブズの事例。
*企業資料館・博物館のリニューアルについての参考事例・企画展示の実際について。
*評価/選別の正しい方法は一つではないと思うので、いろいろな事例を聞きたい。
*参加者同士の情報交換に興味がある。
*ボーンデジタルの管理/保存について、デジタル化した資料の原本とデータの関連付けなど実務の詳細。
*紙資料以外の物資料についての民俗学あるいは考古学研究者の話を聞きたい。
*講義をふまえて、さらに勉強したいと思ったときの初級者レベルの書籍の紹介。
*知的財産を積極的に活用するMOT(Management of Technology)の専門家の話。
*デジタル・アーカイブの今後の展望。

(担当:研修部会・BA講座担当者/事務局)



 

11月22日応用コースの5日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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 応用コース7「事例研究」東芝科学館の紹介と、同館でのアーカイブ活動の現状のご紹介でした。企業博物館としても古い歴史を誇る東芝科学館はそのまま日本の文明の歩みを感じさせるものでした。実務担当の方のお話の館内での体系だった整理と実務の紹介は参考になりました。また、このような部門に携わる方のモチベーションを率直に語られており、他の企業博物館の方々には共感する面があったのではないでしょうか。
 応用コース8「資料管理の現場から」。東大経済学部資料室の紹介と見学をさせていただきました。資料室に新規に入ってくる資料の受け入れから実務の流れを紹介いただき、よく整理された収蔵庫は素晴らしいものです。一般企業がこの通りにという訳にはいかないものの、資料室の環境作りや扱いに関して得ることの多いことであると思いました。

 全講座が終了し、企業史資料の重要度を改めて考えさせられました。企業の培ってきた歴史をふり返る時、単にその歩みを知るだけでなく、貴重な資産としての価値を見出し、活用していくことがこれからますます必要になってきている時代が来ていると痛感しました。そのために社員はこの資産の必要性とそれに携わる部門への理解を深めることがとても大切な第一歩であることも感じたことでした。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂)
 

11月22日に8日間全講座が終了しました。
全課程を受講いただいた11名の方に修了証を発行しましたので、お名前を掲載してご報告いたします。

アサヒグループホールディングス(株)   荒井光弘様
キッコーマン(株)                大坂葉子様
(株)佼成出版社                今野恭子様
(株)佼成出版社                渋谷恵治様
清水建設(株)                 相原玲奈様
創価学会                    柴本達希様
大日本印刷(株)                山本博子様
凸版印刷(株)                 檜垣茂様
トヨタ自動車(株)                今堀里佳様
日本レコードマネジメント(株)        山田敏史様
雪印メグミルク(株)              岩倉秀雄様

どうも有り難うございました。
(研修部会/BA講座担当・事務局) 

11月15日応用コースの4日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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 応用コース6「著作権について」伊藤弁護士のお話でした。自分も含めてこの講座の出席者の大部分が関心のあるテーマではないでしょうか。講師のお話は広範な内容で、専門的な言い回しなど都度丁寧にお話をしていただきました。全体を通して著作権に関するおおまかな内容と、その必要性が整理できたのではないかと思います。ただ、自分たちの仕事の中では多くのケースで自分では判断できないことですから、なにかあればいちいち専門家に確認するのが現状です。我々としては知りませんでしたということのないように、この分野での注意点や知識を身につける大切さを思いました。
 重要なテーマなので、具体例を挙げてその中で、ここではこのような権利にひっかかったと説明をいただくと、よりわかりやすかったのではないでしょうか。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂)

 

11月8日応用コースの3日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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 本日一コマ目「資料の劣化要因と保存対策」、(株)資料保存器材の島田氏の講義であった。主に紙資料に与える劣化要因には用紙本来の材料によるものから保存されていた環境はもちろん、インクによっても影響が大きいことがわかった。また、桐箱は安全という認識があったが、最近の木箱の製法によっては収められた資料に影響を及ぼすとのことであった。史資料の保存対策として治すことよりも防ぐことがいま求められているとのことであり、史資料劣化問題を細かく理解できたと思います。

 本日二コマ目の企業アーカイブズでの資料保存と資料管理のテーマで佐野千絵先生がお話をされた。先生の分野は考えると史資料の保存対策といっても非常に広い範囲で多岐にわたっていることを感じた。文化財の移動、保存に伴う環境対策、自然災害に備える対応などなど。講義は、専門的な内容に陥らず我々にも理解できるような軽妙な内容でよく理解できました。さらに企業アーカイブズに関して言及され、史資料の資産価値を考えてそれに即した保存の仕方と費用をかけることの必要性を述べられていた。東京大学の吉見教授がアーカイブズの日で講演された内容にも、これまでの知識、文化をリサイクルし、その中から新しい価値を見出していき、その仕組み作りと制度化が社会にとって大切なことと語られていた。佐野先生の資料保存の観点からも費用対効果の面から同じことをおっしゃっておられたのが興味深いことでした。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂)






 

 私たち歴史資料ネットワーク(略称:史料ネット)は、1955年1月の阪神・淡路大震災に際して全国の歴史学会の連合体として結成された、被災した歴史資料や文化財の救出・保全活動を行うボランティア団体です。私たちが主に救出・保全の対象とする歴史資料・文化財は、民間所在かつ未指定の歴史資料・文化財です(私たちの活動の概要については、拙稿「被災資料を救う:阪神・淡路大震災からの歴史資料ネットワークの活動」『カレントアウェアネス』No308、2011年6月をご覧ください)。
      http://www.current.ndl.go.jp/ca1743
 2012年10月現在、私たちのような活動をするネットワークは全国で22団体が存在しており、日常的な文化財防災のためのネットワーク構築を行うとともに、災害時における歴史資料・文化財の救出・保全活動の任にあたっています。

 災害時にはまず人命の救助が最優先されることは当然のことですが、その後、歴史資料や文化財等の救出活動がはじまる段階に至っても、日常的に行政の保護の対象外にある民間所在・未指定の文化財については、対応がどうしても後回しにされることがあります。
 こうした状況に対して、東日本大震災では文化庁が主導する「被災文化財等救援委員会」が阪神・淡路大震災に続いて結成され、同委員会による文化財レスキュウ事業が行われています。同事業では指定文化財などの狭義の文化財のみならず、民間所在・未指定の文化財、また現用公文書や図書資料といったような、より広い範囲を対象とした資料救済活動が取り組まれております。しかしながら被害規模が膨大かつ広範囲にわたることもあり、震災発生から1年半以上が経過した現在においても、未だ被災資料の救済活動が行われているのが現状です。
 私たちのような活動が必要とされるのは、前述のように民間所在・未指定の歴史資料や文化財が、日常的な文化財保護行政の範疇を超えるものとして存在しており、災害時にそれらを救出するシステムが確立していないという現状があるためです。また本来、日常的には文化財としてみなされない現用公文書や図書資料などについても災害時に救済するシステムが存在しないため、文化財レスキュー事業のような臨時的な枠組みによって対処せざるを得ないという現状もあります。
 同様な課題は、各企業が所持している企業資料についても共通するものだと考えます。今回の大震災に際しても多くの企業が被災し、被災した企業の資料も多大なダメージを受けましたが、企業資料の救済については、公文書や図書資料といった「公共財産」としてみなせる資料類とはまた違った難しい課題が存在しています。そのことについて、東日本大震災発生直後に私たちが経験したことを事例に、少しお話したいと思います。

 大震災発生から2ヶ月弱が経過した2011年5月はじめ、私たちのもとへ被災地のとある企業(A社)から電話でのご連絡をいただきました。お話しによると、いくつかの店舗が津波被害を受け、企業資料が水損してしまったとのことで、水損した資料をどうしたらよいか、というご相談でした。大震災後、いくつかのメディアで私たちの活動が報道されていたこともあって、こうした相談は既にいくつかいただいておりましたが、企業の方よりご相談を受けたのはこれが初めてでした。
 一旦お話しをお預かりして、当該被災地の資料ネットへ連絡をいたしましたが、そちらからは他の資料で手一杯で手が回らないとの回答を得ましたので、あらためてこちらからA社にご連絡をし、簡易的な応急処置法(送風乾燥など)をお伝えするとともに、水損資料が大量にわたる場合、こちらから人員を派遣してお手伝いが可能である旨をお伝えしました。A社のご担当者は、資料に機密情報や個人情報が含まれることから、一旦検討させてほしい、とのことでしたので、その日はその場で電話を切りました。後日、改めてご連絡さし上げたところ、「もう大丈夫です」とのご返事をいただいたということです。その後どのように処置されたのかは、こちらでは把握できておりません。

 この案件からは、災害時といえども機密情報や個人情報を外部に漏らすわけにはいかない企業資料を救出する際の難しさを感じました。企業にとって顧客の個人情報を保護することや、また事業遂行のための機密情報を外部、特に私たちのような民間ボランティア団体に委ねることが難しいという現状があることは理解できます。同様に資料の機密性ということについては、現用公文書も同様の課題を抱えていると思いますが、東日本大震災においては、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)が中心となり、文化財レスキュー事業のスキームのもとで全国の公文書管理担当職員等が救出活動を担いました。一方企業資料については、現状では個々の企業それぞれが対処する以外の方法がなく、特に中小企業などについては本来修復可能な資料までも廃棄せざるを得ないのが現状であると考えます。

 今、日本列島は首都直下型地震も含めて、大きな地震災害が発生する可能性が高まっている現状にあります。また列島各地では毎年のように大規模な豪雨水害が発生している現状を考えますと、いつどこで大きな災害被害に遭うかわからない現状にあるといえます。
 災害は企業規模の大小に関わらず被害をもたらすものです。そのため個々の企業が日常から企業資料のリスクヘッジを行っておくことはもちろん必要なことですが、同時に、企業資料を取り扱う専門家がネットワークを構築し、いざという時の資料救済の枠組みを議論し、構築しておくことが必要なのではないかと考えています。

               歴史資料ネットワーク事務局長 川内淳史
                     http://siryo-net.jp



 

11月1日応用コースの2日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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 1コマ目は株式会社堀内カラーの肥田康様の「企業史料のデジタル化/A〜Zまで」のお話であった。

 企業のアーカイブズ部署は今後、好むと好まざるとにかかわらず、デジタル化の波に対応していかなければならない。現在および特に将来の課題について、幅広く取上げていただいた。なかでもデジタルデータの多様な活用の仕方では、データベースで感心し、データ化の際に目的によって考え方を変えるという方法論に納得した。
 一つの見かたではあるが、原資料の廃棄の問題、文書のライフサイクルの問題を挙げられた。ボーンデジタルが主流になる将来、こうあるべきという議論ではなくて企業ごとに考え方が分かれてくるであろうし、分かれてきても仕方がないような気がしてきた。
 いずれにしても、企業のアーカイブズ部署のデジタルあるいはデジタル化の問題は常に変化していて、幅も広ければ奥も深い。とても1コマでまとまる話ではない。企業史料協議会の今後の企画に期待したい。


2コマ目は森永製菓株式会社の野秋誠治様による、「企業の資料室におけるデジタル化」の事例のお話であった。
 約10年、資料のデジタル化に取り組まれてから様々なトライをされて、今日までの経験から得た成果、課題が生の形でお聞きできた。
 2003年の時点で、将来の課題を考え、例えば、社内サポートの例として製品別テーマ別の小史の発刊を計画、イントラネットの活用を考えたこと、広報担当業務に積極的にサポートしたこと、それから3〜5年後にはもっと積極的に資料を受け入れようとしたこと、そして現在は技術環境の変化にどう対応していくかを考えながら、常に前向きに志向されておられる姿勢が素晴らしいと思った。
 経験から、テキストデータを付加する際の細かな問題、著作権などの社内の制約の問題などを学び、努力しておられる。
 最後に、デジタル化とは資料の「編集」ではないかと結ばれた。とても参考になる事例のお話であった。

(文責:株式会社コスモスインターナショナル 岡田泰吉)


 応用コース3、「企業の資料室におけるデジタル化」。森永製菓の史料室で長年アーカイブに取り組んで来られた野秋氏のお話でした。野秋氏が史料室に着任からいままで、デジタル化を含め、その中で考えたこと、実施したことを実体験を通してお話されており、企業の担当者として同じ目線で考えることの出来る判りやすい内容であったと思います。
 史料室の機能面から考えて、優先すべき課題から手がけられておられるようでした。デジタル化は「調べるスピードがアップした」、「仕事は増える」、「史料は減らない」と述べられておられました。そしてこれからデジタルの技術面で世の中の趨勢もよく注視していく必要があるし、勉強をしていかなければならないと。いい面もあるがそれに伴って我々も考えなければならない課題も数多くあるという事だと思います。さらに当然ですが、どの企業にとってもアーカイブに関する費用面の社内オーソライズは大きなハードルとして横たわっているように思います。他の企業がどのような課題を抱え、取り組んでいるかとても参考になる講義であったと思います。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂)


 

当協議会会員の松崎裕子氏が寄稿されました。ぜひご覧下さい。

「情報の科学と技術」 Vol. 62 (2012), No.10

特集=「アーカイブズの現在」

<目次>
特集 : 「アーカイブズの現在」の編集にあたって………407
総論 : アーカイブズをいかに位置づけるか:日本の現状からのレビュー古賀 崇………408
利用者の視点からみた米国国立公文書館〜丸裸にされた軍事関係文書を追い求めて〜 三輪 宗弘………415
資産としてのビジネスアーカイブズ: 付加価値を生み出す活用の必要性と課題 松崎 裕子………422
公文書管理法施行と国立公文書館の活動 高山 正也………428
国立国会図書館憲政資料室のいま 藤田 壮介………434
資生堂企業資料館における企業アーカイブズの戦略的取り組み 西川 康男………440
プロダクトレビュー:反応・化合物データベースReaxysの新機能 佐川亜矢子,海附 玄龍………445
投稿:「東日本大震災デジタルアーカイブ」推進者Dr.Andrew Gordonインタビュー 時実 象一………450
見学会報告:奈良国立博物館仏教美術資料研究センター 見学会報告〜仏教美術の歴史と資料を見る〜 西日本委員会………452
連載コラム:表記の標準化(8) 非ラテン文字表記のラテン文字化 太田 泰弘………454
書評・新刊紹介………455
INFOSTA Forum (262) 松岡 弘之………456
協会だより ………457
編集後記 ………458


 

10月25日応用コースの1日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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 物事を「こうあらねばならないと」一度頭に染み込ませるとなかなか考えが先に進めないことがよくある。史資料の分類方法はどうしたらよいかと仕事柄尋ねられる。もちろん明快な答えを持つほどの知識もない私ですが。今日の佐藤教授の「資料の収集、評価、選別、管理と活用」の2コマ講座でのメインになる三菱製紙の資料整理のお話の中でも、これまでの学問的知識は実際の現場ではその通りにならない。膨大な資料を前にして、これまでの知識が先にあって、そこに当てはめてしまい困ってしまったというお話であった。
 そこであるとき、ふと、資料の整理は「その会社にとって大事なことを知ること」を第一に考えることでスムーズに進められるようになったと言われていた。理屈で当てはめずにその組織にとって大切なこと、企業風土を知ることで資料を残した組織の人の思いや考え方を知り、組織にあった整理が見つかるということなのだろう。何事も先入観にとらわれず柔軟に溶け込むこと、一理あるなと思った。さらに、資料整理では「与えられた条件の中で(予算、人的含め)最大の効果を出す」ことがとても重要なことと話されたことが印象的であった。そして、アーカイブはこれら史資料を業務支援のための活用を絶えず考えていく必要があると、締めくくられた。先生のお話は数回拝聴していますが、今更ながら、知ることも多く、実務的なお話は「これなら自分の組織でも一歩進められる」と思う参加者も多かったのではないでしょうか。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂) 

10月18日入門コースの3日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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今日は2コマのプログラムです。1コマ目は(社)日本画像情報マネジメント協会(JIIMA)高橋理事長の講演でした。アーカイブ推進に取り組むJIIMAの活動紹介があり、ビジネスアーキビストの観点から、知っておかなければならないデジタル化の課題をテーマごとにお話されました。史資料の電子化の目的、保存メディアの特性から、将来の課題まで、限られた時間の範囲でしたので、これまでの知識をおさらいしたというところでした。

2コマ目は、出版文化社アーカイブ研究所小谷所長のお話でした。広く文書管理を取り巻く法的整備の状況と、文書管理の意義を述べられ、とりわけ重要な記録管理という考え方を中心にその目的を事例とともに整理された内容で解説されました。記録管理の中で我々が中心課題とする「企業史資料アーカイブ」の位置づけが理解でき、企業でアーカイブへの関心が高まっている全体風景を見ることができました。

入門編が終了して、アーカイブを取り巻く現状や課題が4コマの講座で大きく捉えられたような気がします。しかし、直面する企業の中にある史資料を社内でどのように活かしていくか、また継続してアーカイブを社内で続けるにはどうするか、その手法やその必要性を社内や幹部にいかに理解してもらうのか。現実的な問題が横たわっているように思います。

次回からの応用編で具体的な方向性が見出せることができればと期待します。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂) 

質問者:株式会社コスモスインターナショナル 岡田泰吉
回答者:財団法人東洋文庫

質問:100年保存計画の全体像
   計画に準拠した実際の作品、美術品、資料で実行しておられる事例
   計画の実行による保存上の効果

回答:「浮世絵保存・展示100年計画」についてお答えいたします。
@全体像
浮世絵は油絵とは異なり、光・空気との接触で容易に劣化します。
東洋文庫の浮世絵は大変、保存状態が良い事で国際的に知られていますが、それは従来公開していなかったからなのです。いかにして公開をしながら、劣化を防いで保存するか。これは矛盾を含んだ、しかし重要な課題です。
東洋文庫では、この難題に次の原則で取り組むことにいたしました。
「今後の100年間は、経過時間中の展示時間の割合を1%にする」というもので、具体的には以下のとおりです。
・原則として一点の浮世絵は、3年間(26,280時間)に28時間(280時間)
展示します。
・連作物については、必要に応じ実物と精密複製を併用して展示させて頂きます。(複製はコロタイプという複写方で制作しており、シワやシミの痕までそのまま写した大変精密なものです)
*展示期間を短期にするだけではなく、作品への負担を抑えるための照度調節、温湿度管理も厳密に行っています(当館の場合、照度は40lux程度、室温24℃・湿度55%程度)

A計画に準拠し、実際の作品、美術品、資料で実行している事例
東洋文庫ではミュージアムが開館してから約1年間で下記の4作品で複製を併用して展示いたしました。
*各作品のオリジナル(複製ではない浮世絵)は毎月第1週目に展示替えをいたしました。
事例1、葛飾北斎『諸国瀧廻り』
=>8枚からなる本作は、毎月オリジナルを2図ずつ展示し、残りの6枚は複製を用いるという方法で公開いたしました。4ヶ月間かけて、8枚のオリジナルをそれぞれ約1ヵ月ずつ展示いたしました。
事例2、喜多川歌麿『御殿山の花見駕籠』
事例3、鳥文斎栄之『小舟町天王祭礼図』
事例4、鳥文斎栄之『夏宵遊興図』
=>これらの浮世絵は3枚で一つの作品となる続き物の浮世絵です。3枚の内、1枚はオリジナル、他2枚は複製を展示する方法で、3ヶ月間にわたり
公開をいたしました。

B計画の実行による保存上の効果
長期にわたって積み重ねていく試みなので、劣化の防止など明らかな効果の明言は、約1年経過した現在ではまだ出来ません。

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研修部会では資料の活用や保存などに関わる管理の問題で、ご質問やご意見をお待ちしています(掲載する場合の匿名は可とします)。

また、ビジネスアーキビスト研修講座に関するご意見、あるいは社史に関するセミナー、博物館に関するセミナーについても、ご意見、ご要望をお待ちしております。

kenshu@baa.gr.jpが専用メールアドレスです。


 

質問者:清水建設株式会社 総合企画部 畑田尚子
回答者:財団法人元興寺文化財研究所 保存科学センター

質問:装束類の適切な保管方法について
質問1:収納ケースの仕様
    たたんでの仕舞い込み OR ハンガーかけでの収納
    保存環境の設定(温・湿度)

回答1:装束類は多種ある文化財のマテリアルの中でもとくに経年劣化しやすい素材といえます。折り畳みが繰り返されるだけでも、経緯(たて・よこ)の糸の擦れによってその部分が脆弱になります。また無理に小さく畳むことで襟や裾が巻き込まれてカールしたり、皺が固定してしまうことがあります。折り畳みを少なくして平面で保管するのが最善です。とはいえ、保管スペースはできるだけ身ごろを畳まずに保管できる面積が必要です。
折り目が傷まないように平たく伸ばしておくためには、形状にもよりますが、960mmx700mm程度の面積が必要でしょう。傷みがちな肩などの折り目は可能であれば加湿しながら伸ばした上で、中に綿まくらを沿わせ、傷みにくいように保管してください。保管スペースの深さが100mm程度あればこのような
措置も施せ、出し入れに無理がないと思われます。ゆとりのある収納は、装束類の保管中の損傷の原因となる畳皺、折れ皺の解消に有効です。

和装の装束類は比較的平面で保管しやすいですが、ドレスなどの立体的なものや平らな畳みにくいものを平置きで保管する場合も、そでや身ごろに厚みをもたせたパッドや中綿を使って型を作り、立体的に保管できるように工夫します。

長期間の立体展示やハンガーにかけての収納は、装束そのものの重みが肩山部分に集中してかかりますので避けてください。すでに脆弱になっている装束は平面展示にして、資料にかかる負担を少なくする工夫が必要です。

保管の容器は、ある程度の密閉性と通気性が確保できる中性紙箱や桐箱などは適していますが、密閉性の高すぎるプラスチック容器などは、湿気や資料そのものから発生する酸性物質などがこもってしまう懸念があるので避けてください。長期保存を前提とする場合は強度や調湿性の点では木製品が優れているため、このような条件を満たす箪笥(桐材が適当)を作製し収納するのが最善といえます。また、資料を収納する前にホコリや汚れは丁寧に刷毛などで落としておくことが大切です。

保管場所の温湿度は高温多湿を避け、出来るだけ一日の中での変化を抑えることが望まれます。調整が可能であれば温度22℃前後、相対湿度55±5%程度に設定するとよいでしょう。しかし、空調のON・OFFによる急激な変化は、かえって資料のストレスを高めます。まずは現在の保管環境の温湿度を通年で測定し、高温多湿な危険ゾーンになってしまう時期を見極めて、こまめに除湿機やサーキュレーターを稼動させるなどの対策をお勧めします。また、壁材や接着剤などから放出される酸性物質も資料を劣化させる要因になります。

質問2:ほころびや裂けの処置について
折り目を境に布地の裂けやほころびがある場合、手を加えて縫合した方がよいのか?布地の黄変、変褪色などの今後の措置(それ以上の進行を止める保護措置について)

回答2:布地の裂けやほころびの縫合は、オリジナルの部分に新たな針孔を開けることになり針目が資料を傷めることもありますし、縫合した糸の強度によりかえってオリジナルの布地部分に負担がかかることも予想されます。破断や破損がそれ以上拡がらないように、裏面を柔らかい薄和紙で繕うのが資料に負担の少ない補修だと思われます。繕いを施す場合は、使用する和紙や糊も国産の手漉き楮和紙、小麦粉澱粉糊などの長期保存に適したものであること、可逆性のある方法で修復することが原則です。元々の縫合部分の糸切れなどが生じている場合は、オリジナルと同質の糸で元の針孔に沿って縫合することは可能です。オリジナルの布地の欠損箇所に新しい布地を補填する場合は、オリジナルの布地に近い風合いのものを選び裏面を薄和紙で補強するのが、比較的オリジナルの布地に負担をかけない方法です。いずれにしても、修復は専門の修復技術者に相談し、どのような技法が最適かをよく検討して決めることが大切です。

布地の黄変や染め色の変褪色は経年劣化ですので完全に進行を止めることはできませんが、紫外線を防ぐことで変褪色を抑えることが可能です。中性紙や桐材の収納箱に入れて保管する、展示は短期間に制限する、展示の照明の紫外線をカットし、照度を押さえる、などの工夫が必要です。

質問3:総じて、オリジナルの衣類に縫合などの手を加えるべきではないのか、それとも現状復元に近い状態に戻した方がいいのか、根幹的な対処についての考え方

回答3:文化財へ何らかの手を加えるのは、修復といえども必要最初限にとどめるというのが原則です。どの程度の補強が妥当なのかを判断するには、その資料を今後どのように利用・活用したいのか、という前提を確認することが必要です。反対に、資料の劣化状況を考慮して、展示などの利用を制限するという判断も時には必要です。展示は複製品で行い、オリジナルはできるだけ手を加えずに素材として保たせる、というのも一つの方法です。

オリジナルに手を加えてよいかどうかは、ある程度の強度があるうちは元々の縫合部分の糸切れであればその箇所を同素材で縫合する、あるいは布地の破断している箇所のみを和紙で繕うなどの措置により取扱いが安全になり立体展示が可能になります。立体展示に耐えないほど脆弱な箇所がすでにある場合、それを無理に補強して展示するよりは、そのまま平面展示や保管の改善を検討するほうが良いといえます。

「復元」については、装束類を民俗資料として研究する場合はとくに、「使用痕」の保存も大切になります。過去の修復痕や補強も、その資料が使われてきた過程で加えられたものであれば残す必要があります。現状の復元というのは、不適当な縫合痕をはずして繕いなどの補強をし直すということになりますが、それが資料の使用者の意図するものであったかどうか、資料の履歴を確認することも必要です。

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研修部会では資料の活用や保存などに関わる管理の問題で、ご質問やご意見をお待ちしています。(掲載する場合の匿名は可とします)
また、ビジネスアーキビスト研修講座に関するご意見、あるいは社史に関するセミナー、博物館に関するセミナーについても、ご意見、ご要望をお待ちしております。

kenshu@baa.gr.jp が専用メールアドレスです。



 

10月11日入門コースの2日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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東京大学大学院経済学研究科 武田晴人教授の「企業制度の発達と史料」を聴講した。
講義全体を貫いて、常に史料とは何かを問いながらその答えを整理していただいた。

企業制度が時代と共に変遷し、史料も時代によってその役割、見える形、重要度の認識などが変わることから史料を考える時の時代認識の大切さがよく分かった。また、史料への具体的なアプローチについては、すでにあるものから構成する考え方として分類や整理の方法論があるが、むしろ今日は収集に焦点をあててのお話が中心であった。収集という点に関しては社史編纂のために精力的に努力する時期でなくても、社外からは時代を映す様々な情報を、社内からは広く埋もれた情報を収集することによって、アーカイブズが豊かになっていくことを期待したい。

(文責:株式会社コスモスインターナショナル 岡田泰吉)


 

私は会社のアーカイブズに触れ、もうすぐ2年の新人ですが、まだ整理されていない資料を目の前に、限られた人と金で、どうしたら整理の効率を上げられるかを悩んでいます。
当社は歴史が長く、アーカイブズはあるにはあるのですが、まだ目録もできていませんし、資料が揃っているわけではありません。つまり、至るところに穴があり、欠けているのです。これは当社の恥ずべき問題かと思っていましたが、先日、同業他社へ聞いてみると、同じような問題を抱えていることがわかりました。

企業は業界団体を形成していることが多いのですが、日頃から企業間の歴史情報を交換する機会は殆どございません。そこで、企業資料協議会で、企業の歴史資料の情報交換の場を作り、テクニカルな問題に限らず穴のある歴史情報の交換会を行っては如何でしょうか?お互いの資料価値を高めることに結びつき、メリットが大きいのではないかと思います。できれば、同業者の会があれば、なおうれしいです。

私のつたない経験から事例をお話しますと、自社の経営戦略を策定する時、自社(Company)・競合(Competitor)・市場(Customer)の3C分析を使っていたことから、自社に穴があるなら、3Cを合成、つまり競合他社、その周辺の商品流通の歴史を重ね、当時の市場変化も加味し、横串を揃えることで、当社の縦の流れが整理されるのではないか、と考えるようになりました。そこで、当社は醤油醸造業であることから、当社の年表に代表的な競合4社の年表を並べ、食文化と世の中の出来事の年表を重ねてみました。すると、今まで沢山の気づきがあったのです。

大手醤油会社は、歴史的に、個人造家が集まり組合組織を経て会社化しています。生き残りをかけ、事業を伸ばすため個人造家が合併し会社となっていきますが、その事情は各社夫々異なるようです。他社を学ぶことで自社の会社化の歴史が見えてくるように思えました。

また、戦時および終戦後、原料が不足した統制経済の時代、各社が異なる方法でその難局を乗り切っています。戦争を知らない世代にとっては、自社の歩みだけを見ていたのでは理解が浅くなってしまいます。競合他社、更に他業界、例えば菓子業界の原料供給状況も重ねたことで、時代背景も含め3Cが結びつき、自社への理解も深まりました。

このようなことは、きっとどこの会社でも悩んでいることではないでしょうか?同じ作業をされている者同士の情報交換会があれば、それが各社の企業活動の多くの場面で活用できるのでないかと思います。昨年の総会で、資生堂の福原名誉会長が“社史は経営のバイブル、過去を分析的に見ることで未来が見られる”という言葉が忘れられません。自社だけの歴史を見るより、同業他社と市場の歴史を重ねることで自社の歴史がより明確になります。また、多くの会社で歴史を共有することで、各社の未来のヒントになるのであればうれしい限りです。

企業資料の活用が、会社経営に具体的に貢献できる場を増やせば、多くの方から企業資料の重要性への理解を深めてもらえ、もっと人や予算がつけてもらえる可能性もありそうです。如何ですか?やってみませんか?


キッコーマン国際食文化研究センター
舩田 一惠
 

10月4日、入門コースの初日が終了しました。内容の速報をお届けします。

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学習院大学安藤正人教授の「アーカイブズとアーキビストの役割」を聴講した。
アーカイブの全体像の総論的な話とアーキビアストの役割、さらに世界の主要国とアジアのアーカイブ事情をまとめて紹介した講義であった。昨今、アーカイブに関する関心と必要性が企業内でも取り上げられることが多くなり、参加される方々も熱心にメモをとっておられた。
アーカイブを「文化資源」、「社会資源」、「組織資源」に分けて、その役割を丁寧に解説され、考え方を整理することができた。講義の中でもアーカイブの考え方や必要性は身近な問題の中にもあることが強調されていた。
我々は、目の前に流れてくる膨大な情報やその中で起こる出来事を流れのままに任せてしまい勝ちである。その流れの中から、本当に大切な事実を見失うことなく取り上げて蓄積していくことがアーカイブにとってとても大切なことになるのだろう。しかし人間、そのちょっとの努力がなかなか出来ない。景気の上向きの時代はそれで済んでいたが、不景気になるとその時代の少しの努力を怠ったことがとても大きな「つけ」として顕在化し、その努力を惜しまず積み重ねてきた人とそうでない人に差がついてしまう。怠慢な私の周辺を振り返って、嘆いていてもしかたない。これからアーカイブに関心を持ち、その必要性を我々は知識として知り、そのために、一人一人が情報の流れの中に手を差し伸べる努力をいとわなければアーカイブはすぐにでもスタートを出来ていくものなのだろうと思う。そしてその努力が将来の仕事や社会生活の中に生かされるのではないかと、講義を通して考えさせられた。
隣国、アジアの国々のアーカイブの現状がコンパクトに紹介されたが、日本はそれら代表的な国に比べて組織性、問題解決のスピードの面で心もとなくも感じたことだ。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂)
 


 
 
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