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10月25日応用コースの1日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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 物事を「こうあらねばならないと」一度頭に染み込ませるとなかなか考えが先に進めないことがよくある。史資料の分類方法はどうしたらよいかと仕事柄尋ねられる。もちろん明快な答えを持つほどの知識もない私ですが。今日の佐藤教授の「資料の収集、評価、選別、管理と活用」の2コマ講座でのメインになる三菱製紙の資料整理のお話の中でも、これまでの学問的知識は実際の現場ではその通りにならない。膨大な資料を前にして、これまでの知識が先にあって、そこに当てはめてしまい困ってしまったというお話であった。
 そこであるとき、ふと、資料の整理は「その会社にとって大事なことを知ること」を第一に考えることでスムーズに進められるようになったと言われていた。理屈で当てはめずにその組織にとって大切なこと、企業風土を知ることで資料を残した組織の人の思いや考え方を知り、組織にあった整理が見つかるということなのだろう。何事も先入観にとらわれず柔軟に溶け込むこと、一理あるなと思った。さらに、資料整理では「与えられた条件の中で(予算、人的含め)最大の効果を出す」ことがとても重要なことと話されたことが印象的であった。そして、アーカイブはこれら史資料を業務支援のための活用を絶えず考えていく必要があると、締めくくられた。先生のお話は数回拝聴していますが、今更ながら、知ることも多く、実務的なお話は「これなら自分の組織でも一歩進められる」と思う参加者も多かったのではないでしょうか。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂) 

10月18日入門コースの3日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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今日は2コマのプログラムです。1コマ目は(社)日本画像情報マネジメント協会(JIIMA)高橋理事長の講演でした。アーカイブ推進に取り組むJIIMAの活動紹介があり、ビジネスアーキビストの観点から、知っておかなければならないデジタル化の課題をテーマごとにお話されました。史資料の電子化の目的、保存メディアの特性から、将来の課題まで、限られた時間の範囲でしたので、これまでの知識をおさらいしたというところでした。

2コマ目は、出版文化社アーカイブ研究所小谷所長のお話でした。広く文書管理を取り巻く法的整備の状況と、文書管理の意義を述べられ、とりわけ重要な記録管理という考え方を中心にその目的を事例とともに整理された内容で解説されました。記録管理の中で我々が中心課題とする「企業史資料アーカイブ」の位置づけが理解でき、企業でアーカイブへの関心が高まっている全体風景を見ることができました。

入門編が終了して、アーカイブを取り巻く現状や課題が4コマの講座で大きく捉えられたような気がします。しかし、直面する企業の中にある史資料を社内でどのように活かしていくか、また継続してアーカイブを社内で続けるにはどうするか、その手法やその必要性を社内や幹部にいかに理解してもらうのか。現実的な問題が横たわっているように思います。

次回からの応用編で具体的な方向性が見出せることができればと期待します。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂) 

質問者:株式会社コスモスインターナショナル 岡田泰吉
回答者:財団法人東洋文庫

質問:100年保存計画の全体像
   計画に準拠した実際の作品、美術品、資料で実行しておられる事例
   計画の実行による保存上の効果

回答:「浮世絵保存・展示100年計画」についてお答えいたします。
@全体像
浮世絵は油絵とは異なり、光・空気との接触で容易に劣化します。
東洋文庫の浮世絵は大変、保存状態が良い事で国際的に知られていますが、それは従来公開していなかったからなのです。いかにして公開をしながら、劣化を防いで保存するか。これは矛盾を含んだ、しかし重要な課題です。
東洋文庫では、この難題に次の原則で取り組むことにいたしました。
「今後の100年間は、経過時間中の展示時間の割合を1%にする」というもので、具体的には以下のとおりです。
・原則として一点の浮世絵は、3年間(26,280時間)に28時間(280時間)
展示します。
・連作物については、必要に応じ実物と精密複製を併用して展示させて頂きます。(複製はコロタイプという複写方で制作しており、シワやシミの痕までそのまま写した大変精密なものです)
*展示期間を短期にするだけではなく、作品への負担を抑えるための照度調節、温湿度管理も厳密に行っています(当館の場合、照度は40lux程度、室温24℃・湿度55%程度)

A計画に準拠し、実際の作品、美術品、資料で実行している事例
東洋文庫ではミュージアムが開館してから約1年間で下記の4作品で複製を併用して展示いたしました。
*各作品のオリジナル(複製ではない浮世絵)は毎月第1週目に展示替えをいたしました。
事例1、葛飾北斎『諸国瀧廻り』
=>8枚からなる本作は、毎月オリジナルを2図ずつ展示し、残りの6枚は複製を用いるという方法で公開いたしました。4ヶ月間かけて、8枚のオリジナルをそれぞれ約1ヵ月ずつ展示いたしました。
事例2、喜多川歌麿『御殿山の花見駕籠』
事例3、鳥文斎栄之『小舟町天王祭礼図』
事例4、鳥文斎栄之『夏宵遊興図』
=>これらの浮世絵は3枚で一つの作品となる続き物の浮世絵です。3枚の内、1枚はオリジナル、他2枚は複製を展示する方法で、3ヶ月間にわたり
公開をいたしました。

B計画の実行による保存上の効果
長期にわたって積み重ねていく試みなので、劣化の防止など明らかな効果の明言は、約1年経過した現在ではまだ出来ません。

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研修部会では資料の活用や保存などに関わる管理の問題で、ご質問やご意見をお待ちしています(掲載する場合の匿名は可とします)。

また、ビジネスアーキビスト研修講座に関するご意見、あるいは社史に関するセミナー、博物館に関するセミナーについても、ご意見、ご要望をお待ちしております。

kenshu@baa.gr.jpが専用メールアドレスです。


 

質問者:清水建設株式会社 総合企画部 畑田尚子
回答者:財団法人元興寺文化財研究所 保存科学センター

質問:装束類の適切な保管方法について
質問1:収納ケースの仕様
    たたんでの仕舞い込み OR ハンガーかけでの収納
    保存環境の設定(温・湿度)

回答1:装束類は多種ある文化財のマテリアルの中でもとくに経年劣化しやすい素材といえます。折り畳みが繰り返されるだけでも、経緯(たて・よこ)の糸の擦れによってその部分が脆弱になります。また無理に小さく畳むことで襟や裾が巻き込まれてカールしたり、皺が固定してしまうことがあります。折り畳みを少なくして平面で保管するのが最善です。とはいえ、保管スペースはできるだけ身ごろを畳まずに保管できる面積が必要です。
折り目が傷まないように平たく伸ばしておくためには、形状にもよりますが、960mmx700mm程度の面積が必要でしょう。傷みがちな肩などの折り目は可能であれば加湿しながら伸ばした上で、中に綿まくらを沿わせ、傷みにくいように保管してください。保管スペースの深さが100mm程度あればこのような
措置も施せ、出し入れに無理がないと思われます。ゆとりのある収納は、装束類の保管中の損傷の原因となる畳皺、折れ皺の解消に有効です。

和装の装束類は比較的平面で保管しやすいですが、ドレスなどの立体的なものや平らな畳みにくいものを平置きで保管する場合も、そでや身ごろに厚みをもたせたパッドや中綿を使って型を作り、立体的に保管できるように工夫します。

長期間の立体展示やハンガーにかけての収納は、装束そのものの重みが肩山部分に集中してかかりますので避けてください。すでに脆弱になっている装束は平面展示にして、資料にかかる負担を少なくする工夫が必要です。

保管の容器は、ある程度の密閉性と通気性が確保できる中性紙箱や桐箱などは適していますが、密閉性の高すぎるプラスチック容器などは、湿気や資料そのものから発生する酸性物質などがこもってしまう懸念があるので避けてください。長期保存を前提とする場合は強度や調湿性の点では木製品が優れているため、このような条件を満たす箪笥(桐材が適当)を作製し収納するのが最善といえます。また、資料を収納する前にホコリや汚れは丁寧に刷毛などで落としておくことが大切です。

保管場所の温湿度は高温多湿を避け、出来るだけ一日の中での変化を抑えることが望まれます。調整が可能であれば温度22℃前後、相対湿度55±5%程度に設定するとよいでしょう。しかし、空調のON・OFFによる急激な変化は、かえって資料のストレスを高めます。まずは現在の保管環境の温湿度を通年で測定し、高温多湿な危険ゾーンになってしまう時期を見極めて、こまめに除湿機やサーキュレーターを稼動させるなどの対策をお勧めします。また、壁材や接着剤などから放出される酸性物質も資料を劣化させる要因になります。

質問2:ほころびや裂けの処置について
折り目を境に布地の裂けやほころびがある場合、手を加えて縫合した方がよいのか?布地の黄変、変褪色などの今後の措置(それ以上の進行を止める保護措置について)

回答2:布地の裂けやほころびの縫合は、オリジナルの部分に新たな針孔を開けることになり針目が資料を傷めることもありますし、縫合した糸の強度によりかえってオリジナルの布地部分に負担がかかることも予想されます。破断や破損がそれ以上拡がらないように、裏面を柔らかい薄和紙で繕うのが資料に負担の少ない補修だと思われます。繕いを施す場合は、使用する和紙や糊も国産の手漉き楮和紙、小麦粉澱粉糊などの長期保存に適したものであること、可逆性のある方法で修復することが原則です。元々の縫合部分の糸切れなどが生じている場合は、オリジナルと同質の糸で元の針孔に沿って縫合することは可能です。オリジナルの布地の欠損箇所に新しい布地を補填する場合は、オリジナルの布地に近い風合いのものを選び裏面を薄和紙で補強するのが、比較的オリジナルの布地に負担をかけない方法です。いずれにしても、修復は専門の修復技術者に相談し、どのような技法が最適かをよく検討して決めることが大切です。

布地の黄変や染め色の変褪色は経年劣化ですので完全に進行を止めることはできませんが、紫外線を防ぐことで変褪色を抑えることが可能です。中性紙や桐材の収納箱に入れて保管する、展示は短期間に制限する、展示の照明の紫外線をカットし、照度を押さえる、などの工夫が必要です。

質問3:総じて、オリジナルの衣類に縫合などの手を加えるべきではないのか、それとも現状復元に近い状態に戻した方がいいのか、根幹的な対処についての考え方

回答3:文化財へ何らかの手を加えるのは、修復といえども必要最初限にとどめるというのが原則です。どの程度の補強が妥当なのかを判断するには、その資料を今後どのように利用・活用したいのか、という前提を確認することが必要です。反対に、資料の劣化状況を考慮して、展示などの利用を制限するという判断も時には必要です。展示は複製品で行い、オリジナルはできるだけ手を加えずに素材として保たせる、というのも一つの方法です。

オリジナルに手を加えてよいかどうかは、ある程度の強度があるうちは元々の縫合部分の糸切れであればその箇所を同素材で縫合する、あるいは布地の破断している箇所のみを和紙で繕うなどの措置により取扱いが安全になり立体展示が可能になります。立体展示に耐えないほど脆弱な箇所がすでにある場合、それを無理に補強して展示するよりは、そのまま平面展示や保管の改善を検討するほうが良いといえます。

「復元」については、装束類を民俗資料として研究する場合はとくに、「使用痕」の保存も大切になります。過去の修復痕や補強も、その資料が使われてきた過程で加えられたものであれば残す必要があります。現状の復元というのは、不適当な縫合痕をはずして繕いなどの補強をし直すということになりますが、それが資料の使用者の意図するものであったかどうか、資料の履歴を確認することも必要です。

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研修部会では資料の活用や保存などに関わる管理の問題で、ご質問やご意見をお待ちしています。(掲載する場合の匿名は可とします)
また、ビジネスアーキビスト研修講座に関するご意見、あるいは社史に関するセミナー、博物館に関するセミナーについても、ご意見、ご要望をお待ちしております。

kenshu@baa.gr.jp が専用メールアドレスです。



 

10月11日入門コースの2日目が終了しました。内容の速報をお届けします。

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東京大学大学院経済学研究科 武田晴人教授の「企業制度の発達と史料」を聴講した。
講義全体を貫いて、常に史料とは何かを問いながらその答えを整理していただいた。

企業制度が時代と共に変遷し、史料も時代によってその役割、見える形、重要度の認識などが変わることから史料を考える時の時代認識の大切さがよく分かった。また、史料への具体的なアプローチについては、すでにあるものから構成する考え方として分類や整理の方法論があるが、むしろ今日は収集に焦点をあててのお話が中心であった。収集という点に関しては社史編纂のために精力的に努力する時期でなくても、社外からは時代を映す様々な情報を、社内からは広く埋もれた情報を収集することによって、アーカイブズが豊かになっていくことを期待したい。

(文責:株式会社コスモスインターナショナル 岡田泰吉)


 

私は会社のアーカイブズに触れ、もうすぐ2年の新人ですが、まだ整理されていない資料を目の前に、限られた人と金で、どうしたら整理の効率を上げられるかを悩んでいます。
当社は歴史が長く、アーカイブズはあるにはあるのですが、まだ目録もできていませんし、資料が揃っているわけではありません。つまり、至るところに穴があり、欠けているのです。これは当社の恥ずべき問題かと思っていましたが、先日、同業他社へ聞いてみると、同じような問題を抱えていることがわかりました。

企業は業界団体を形成していることが多いのですが、日頃から企業間の歴史情報を交換する機会は殆どございません。そこで、企業資料協議会で、企業の歴史資料の情報交換の場を作り、テクニカルな問題に限らず穴のある歴史情報の交換会を行っては如何でしょうか?お互いの資料価値を高めることに結びつき、メリットが大きいのではないかと思います。できれば、同業者の会があれば、なおうれしいです。

私のつたない経験から事例をお話しますと、自社の経営戦略を策定する時、自社(Company)・競合(Competitor)・市場(Customer)の3C分析を使っていたことから、自社に穴があるなら、3Cを合成、つまり競合他社、その周辺の商品流通の歴史を重ね、当時の市場変化も加味し、横串を揃えることで、当社の縦の流れが整理されるのではないか、と考えるようになりました。そこで、当社は醤油醸造業であることから、当社の年表に代表的な競合4社の年表を並べ、食文化と世の中の出来事の年表を重ねてみました。すると、今まで沢山の気づきがあったのです。

大手醤油会社は、歴史的に、個人造家が集まり組合組織を経て会社化しています。生き残りをかけ、事業を伸ばすため個人造家が合併し会社となっていきますが、その事情は各社夫々異なるようです。他社を学ぶことで自社の会社化の歴史が見えてくるように思えました。

また、戦時および終戦後、原料が不足した統制経済の時代、各社が異なる方法でその難局を乗り切っています。戦争を知らない世代にとっては、自社の歩みだけを見ていたのでは理解が浅くなってしまいます。競合他社、更に他業界、例えば菓子業界の原料供給状況も重ねたことで、時代背景も含め3Cが結びつき、自社への理解も深まりました。

このようなことは、きっとどこの会社でも悩んでいることではないでしょうか?同じ作業をされている者同士の情報交換会があれば、それが各社の企業活動の多くの場面で活用できるのでないかと思います。昨年の総会で、資生堂の福原名誉会長が“社史は経営のバイブル、過去を分析的に見ることで未来が見られる”という言葉が忘れられません。自社だけの歴史を見るより、同業他社と市場の歴史を重ねることで自社の歴史がより明確になります。また、多くの会社で歴史を共有することで、各社の未来のヒントになるのであればうれしい限りです。

企業資料の活用が、会社経営に具体的に貢献できる場を増やせば、多くの方から企業資料の重要性への理解を深めてもらえ、もっと人や予算がつけてもらえる可能性もありそうです。如何ですか?やってみませんか?


キッコーマン国際食文化研究センター
舩田 一惠
 

10月4日、入門コースの初日が終了しました。内容の速報をお届けします。

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学習院大学安藤正人教授の「アーカイブズとアーキビストの役割」を聴講した。
アーカイブの全体像の総論的な話とアーキビアストの役割、さらに世界の主要国とアジアのアーカイブ事情をまとめて紹介した講義であった。昨今、アーカイブに関する関心と必要性が企業内でも取り上げられることが多くなり、参加される方々も熱心にメモをとっておられた。
アーカイブを「文化資源」、「社会資源」、「組織資源」に分けて、その役割を丁寧に解説され、考え方を整理することができた。講義の中でもアーカイブの考え方や必要性は身近な問題の中にもあることが強調されていた。
我々は、目の前に流れてくる膨大な情報やその中で起こる出来事を流れのままに任せてしまい勝ちである。その流れの中から、本当に大切な事実を見失うことなく取り上げて蓄積していくことがアーカイブにとってとても大切なことになるのだろう。しかし人間、そのちょっとの努力がなかなか出来ない。景気の上向きの時代はそれで済んでいたが、不景気になるとその時代の少しの努力を怠ったことがとても大きな「つけ」として顕在化し、その努力を惜しまず積み重ねてきた人とそうでない人に差がついてしまう。怠慢な私の周辺を振り返って、嘆いていてもしかたない。これからアーカイブに関心を持ち、その必要性を我々は知識として知り、そのために、一人一人が情報の流れの中に手を差し伸べる努力をいとわなければアーカイブはすぐにでもスタートを出来ていくものなのだろうと思う。そしてその努力が将来の仕事や社会生活の中に生かされるのではないかと、講義を通して考えさせられた。
隣国、アジアの国々のアーカイブの現状がコンパクトに紹介されたが、日本はそれら代表的な国に比べて組織性、問題解決のスピードの面で心もとなくも感じたことだ。

(文責:凸版印刷株式会社 檜垣茂)
 

当協議会会員で前理事の大谷明史氏が執筆された論文「本邦アーカイブズの30年」が、
日本アーカイブズ学会発行の『アーカイブズ学研究』第16号(2012年3月)38−46ページ
に掲載されました。
関心のある方はぜひお読みください。
(2012年8月投稿) 

企業史料協議会の事務局から、新しく投稿コーナーを作るから、何か書いて欲しいとの原稿依頼。内容、形式に縛りはないとのことでしたので、現在行なっていること、考えていることを、対話形式でお伝えすることにしました。この対話は現実に行われたものではありません。しかし、このような会話は、人や場面は違いますが、交わされてきたものです。


☆今日はお願いがあってまいりました。

★わざわざ史料室におこしいただかなくても、メールでも良かったのに。で、お願いとは、なんでしょうか。

☆新入社員の研修の際に、会社の歴史について話して欲しいのですが。

★喜んで、お引き受けしますよ。それで、どんな観点から話しますか。

☆お任せします。ただ、新入社員が誇りを持って仕事に臨めるようなエピソードは入れて欲しいのですが。

★わかりました。それで時間はどのくらいですか。

☆質疑の時間をいれて90分ではいかがですか。

★了解です。今の子どもたちが歴史についてどの程度の知識をもっているかわからないので、社会の状況についても触れながら、話しますよ。大きくいえば、当社の歴史も、人類の歴史、世界の歴史の中にありますからね。とは、言っても、能力的な問題もありますから、会社の歴史の周辺だけにはなりますが。

☆お願いします。ところで、史料室の担当になってどのくらいになりますか。

★7年程過ぎました。

☆7年ですか。飽きませんか。

★ぜんぜん。会社の歴史について知らないことが一杯ありますし、まだまだ勉強中です。

☆これまで社史は2回発行されていますし、創業者の伝記もありますし、それだけでは足りないですか。

★お客様やマスコミの窓口からは毎日のように質問がきますし、営業部門からも問い合わせはあります。社史は諸先輩が苦労して作られた書物ですから、基本となる資料です。ただし、すべての答えが見つかるわけではない。また、社史の作られたときには常識として書かれなかった説明が、今では説明しないとわからないこともあります。

☆常識は変化しますね。

★そうなんです。ですから、今の歴史を、記録と言った方が良いかもしれませんが、残すときも、そのことには気をつけています。当たり前のことも記録しようと。

☆大変ですね。

★大変です。しかも情報は増えているのに、紙での発信は減っている。残そうと思う情報は紙に印刷して残さないと、次の世代には伝わらない可能性もある。


電話のベルの音

★失礼、電話なんで、お待ちください。
もしもし、史料室です。
え、昭和32年に発売したトッフィーキャラメルの画像データですか。ありますが、何に使うのですか。新聞社からの依頼。了解です。メールで送っておきます。えっ、その時キャンペーンを行なったときのロボット像についてのエピソードが欲しいのですか。「100年史」の195ページの記載内容では駄目ですか。それでは、当時の社内報からも探してお送りします。じゃあ。

★失礼しました。

☆史料のデジタル化については、どうお考えですか。

★デジタル化は進めていますし、好きです。そして、デジタル化にあたっては、良い点も悪い点も理解する必要はあると思います。

☆良い点、悪い点とは。

★昔の情報は紙が主体です。紙は劣化するし紙の山の中から必要な情報を探すのは大変です。僕が史料室に来た時は、紙の目録はありましたが、必要な資料を探すので苦労しました。先輩の頭の中には、どこになにがあるかの地図があったようです。それは身体が覚えたものでしょうが、それでは後任者は大変ですし、覚えるまでの時間がかかり過ぎます。そこで、デジタルデータにして、検索してどこになにがあるかを分かるようにしました。ただし、検索に頼りすぎてもいけない。時間をかけることも大切ですし、紙の山に潜り込むことも必要です。前後左右に関連する情報があるかもしれないし、検索から漏れる情報もあるからです。

☆「検索してコピペ」だけでは駄目ということですね。

★そうです。同時に、デジタル化するだけではなく、アナログ化することも必要です。

☆どういうことですか。

★今のデジタル情報を印刷してアナログ化して分類して保管する。そしてアナログ情報の目録をデジタル化して共有する、ということです。

☆毎年増えるんでしょうが、出来ているんですか。

★道半ば、いや三合目かな。(苦笑)
あと、デジタル化することの歴史が短いので、顕在化していない問題もあると思います。デジタル化に限らず、機械とソフトの関係にもありますが。

☆デジタル化の問題点ですね。

★顕在化しているし、想像できることですが、ハードディスクドライブは壊れると、保存していたデータは一瞬のうちに消えてしまいます。CDやDVDに残しているデータは100年持たないと言われていますし、10年程度という、見方をする人もいます。また、以前は当たり前に出来たオープンリールテープやベータ方式のテープの再生は、今はそうではないですよね。カセットテープだって、まもなくそうなるのではないですか。ソフトのバージョンアップの問題もありますし、そもそも、WindowsというOSだってどうなるか、わかりません。

☆そう言われれば、その通りですね。で、どうしているのですか。

★ハードディスクやCD等の媒体については、複数のバックアップを取るようにしています。ベータ方式のビデオデッキやスライド映写機も残しています。OSの問題は突然は来ないでしょうから、その時の担当者に対応してもらいます。(笑)

☆過去だけではなく、未来も意識しなければいけないのですね。頑張ってください。

★ありがとうございます。

☆では、新入社員の研修、お願いいたします。

★分かりました。パワーポイントで説明しますので、パソコン等の準備お願いします。

 

このページには会員企業からの様々な情報や意見を、自由な形で掲載していく予定です。

掲載のご希望がございましたら、事務局までお問合せください。

第1回目は森永製菓株式会社からのちょっと変わった発信です。お楽しみください。
(2010年9月)
 

 
 
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